2012年7月4日水曜日

ヨットレースのスタート方法

自艇を購入して以来、すっかりハマってしまってました。約20年のブランクがあるので最初はおっかなびっくりでしたがだいぶカンが戻ってきたようで、最近はレース形式の練習が楽しくて仕方ありません。

そこで、今回は自分用のまとめも兼ねて、レースに欠かせないスタートについて話します。

ヨットレースはどちらかというと「純粋な速さを競う」というより「タクティカル」が強いゲームなので、 スタートで前に出られれば、その分だけだしぬくべき相手が減ることになり、後の展開がとてもとても楽になります。それだけに、うまくスタートすることが非常に重要なんです。

【前提】

スタートの前提知識として、まずは以下を頭にとめておいて下さい。
  1. ヨットは風向きに対してだいたい45度の方向に走ることができ、たいていの場合その向きでスタートする。
  2. 左側から風を受けている船が右側から風を受けている船と接近した場合、左側から風を受けている船が避けないといけない(競技規則により)。なので、普通みんな「右」から風を受ける状態でスタートする。
  3. スタートラインと言っても海上に物理的な線を引くことはできないので、本部船とマーク(ブイ)を結ぶラインがスタートラインとされ、「スタート時刻」以後にスタートラインを横切ればスタートとみなされる。(なのでもちろんスタート時刻ぴったりにスタートラインを横切った方が有利)
  4. 風は常に一定の方向から吹いているわけではなく、右にふれたり左にふれたり、また右海面の方が風が強かったり左海面の方が強かったりする。

【スタート時刻ぴったりにラインを通過するには】

車と違ってヨットにはブレーキがないので、一度走り始めるとセールをゆるめても(シバと言います)なかなか止まってくれません。なので、急に止まる必要がないように、スタート時刻ぎりぎりまでシバでゆるゆると前進してラインに近づき、数秒前に初めてセールを引き込んで加速、ラインに到達するときにはフルスピードになるようコントロールします。

そういう風にスタートしますので、スタート時刻の3分前とかに「3分後にスタートラインの少し手前に到達する位置」につけて、自分がスタートするための場所を確保します。 そこからシバを始めてスタート時刻を待つわけです。

【3分前に具体的にどこにいればいいのか?】

考慮すべきは2点。
  • 1分シバしている間にどれだけ進むか?
  • スタートライン上のどこからスタートしたいのか?
です。

【1分シバしている間にどれだけ進むか?】

自分が1分のシバでどれくらい進むかを知るには、マークの外側で船を停止させた状態からシバを始め、1分経った後にマークに対して自分がどの方向にどれくらい離れたかを確認します。

自分が1分シバするとどの方向にどれくらい進む(or流れる)かがわかれば、スタートしたい地点から1分前にいるべき位置は逆算できますし、3分前にいるべき位置も自ずとわかります。
たとえば、1分間シバすると前に1艇身(艇身とは船1艇分の長さ)、風下方向に3艇身進むとします。
※船は前方45度から風を受けているので、前に進むだけでなく風下にも流れてしまいます。また、潮や波の影響も見過ごせません。
 このとき1分前にいるべき場所は、スタートしたい地点から逆算して後ろに1艇身、風上に3艇身のところになります。3分前なら後ろに3艇身、風上に9艇身の地点ですね。

すると次は、じゃあスタートしたい地点がどこなのか、どこからスタートするべきか、が問題になります。

【スタートライン上のどこからスタートしたいのか?】

ここでも、考慮すべき点が2点あります。考えることが多いです。
  • ラインのどちら側が有利か?
  • スタート後にどちらに行きたいか?

【ラインのどちら側が有利か?】

本部船とマークで構成されるスタートラインの、本部船側からスタートすべきか、マーク側からスタートすべきかという問題です。
スタートラインは本来風向きに対して直角に設定されます。この場合、ラインのどちらが有利ということはありません。しかし、直角になる位置にマークを打つのを失敗したり、スタートラインを設定した後に風がふれたりすると、本部船の方が風上にあったり、マークの方が風上にあったりします。(実際にはかならずこのどちらかの状態になってます)

そこで、スタートするときには「より風上の方からスタートする」が鉄則になります。
徒競走やモーターレースを考えてもらうとわかりやすいですが、ふつうのレースのスタートラインはコースに対して直角にひかれてますよね。これがどちらかに傾いていたら?ゴールに近い方からスタートした方が有利ですよね。
それと同じ事です。

ラインがどちらに傾いているかを知るには、ラインの延長線上で船を風向きに立ててみてラインが90度に見えるかチェックする方法や、ライン上を往復してみて、往路と復路でのセールの出し具合で知る(ラインが傾いていれば、往路と復路でセールの出し具合が変わるので)方法があります。

【スタート後にどちらに行きたいか?】

スタートした後、右に行きたいか左に行きたいか、という問題です。
(風に対して45度に進むので、右側から風を受ける状態でまっすぐ進むと左に行くことになり、スタート後すぐに90度方向転換して 左側から風を受ける状態で進めば右に行くことになります)

どちらに行くべきかの分岐ロジックは長くなるので割愛しますが、この問題は以下のように整理できます。

行きたい方向
スタート位置
本部船側問題なし(1)問題なし(2)
マーク側問題あり(3)問題なし(4)


問題なし・ありというのは、同時にスタートした多艇との関係で問題が生じるかどうか、ということです。
前提の(2)を思い出して下さい。
  1. 左側から風を受けている船が右側から風を受けている船と接近した場合、左側から風を受けている船が避けないといけない。
これによって、スタートするときは普通みんな「右側から風を受けている状態」でスタートします。 左側から風を受ける状態でスタートすると、当然右側から風を受けている船の集団と接近してしまい、全員を避けて後ろにまわらないといけなくなる可能性が高いからです。 それが、表で言うと「問題あり(3)」のパターンです。
「問題あり(3)」ではマーク側の方が風上にあるので有利なんですが、スタートした後(方向転換して)右に向かうとき、自分より本部船側からスタートした全員の前を通れるくらい有利なのでなければ、非常にリスクが高いです。

ほかのパターンはどうでしょうか。
「問題なし(1)」と「問題なし(4)」は、ほかの船と接近することなく行きたい方向に行けるので、  最もリスクが低いです。
「問題なし(2)」は、本部船側からスタートしてそのまま直進するわけですが、ほかの船と接近することがあったとしても、その船は必ず「左側から風を受ける状態」でやってきますので、相手の方が避けてくれます。(が、相手がムチャなことをしないとも限らないので、(2)(4)と比べるとリスクがあります)

これらを総合的に評価して、利益が最大になると思われる位置からスタートします。
その地点から逆算して、1分前、3分前の位置が決まるのでしたね。

ところで、 前述したスタートラインが風向きに対して傾いている話ですが、これに関してはさらに注意しないといけないことがあります。ラインがどちらに傾いているかで、フライングしてしまったりスタート時刻にまにあわなかったりしやすいんです。それについてはまたあらためて話しましょう。

そして、このポストでは理論的な事柄についてのみ述べましたが、実際のスタートでは、シバの上手い下手や、シバからフルスピードに到達する加速の上手い下手、また、目視で「スタートすべき地点から後ろに3艇身・風上に9艇身」の位置を正確に知る能力が必要になります。
これは練習を積むしかないです。

さらに、スタートする船の数が多かったりラインが短かったりすると、すぐ横にほかの船が割り込んできたり、ぶつけられたりすることもあります。そういうのが近寄らないよう威圧・けん制したり、やられてしまったら冷静にリカバリーしたりしなきゃいけませんし、また熱くなりすぎないことも重要です。(スタート直前に風がふれて、事前に立てていた計画を見直さなければならなくなることもあります)

そんな調子で、ヨットレースのスタートはほんとに頭の中が忙しいのですが、 そこが楽しいところでもあります。
ではまた。