2012年3月16日金曜日

ヨット競技とソーシャルゲーム、Facebookの共通点(1/2)

なんでしょう?

根上さんもご存じの通り、私は携帯電話向けのゲームを作る仕事をしています。
ここ数年、ゲームのもつ「ゲーム性」が、理論として明確に語られるようになってきました。
良い例が、今流行りのソーシャルゲーム、モバゲーとかグリー、「怪盗ロワイヤル」や「探検ドリランド」の、アレです。

日本でソーシャルゲームが流行り始めた頃の、いわゆるゲーム業界の態度は「あんなのゲームじゃねえpgr」でした。私も初めてプレイしたときは、何が面白いのかわかりませんでした。「ボタンを押してレベルをあげるだけか?」と(笑)。

たしかに、ロワイヤルやドリランドは、プレイヤーにテクニックも知力も要求しません。
戦闘もただボタンを押すだけで誰でも進めることができて、いわゆる「攻略法」も「上手い下手」もないんですね。
そういう意味ではたしかに、ハードルの攻略を本質とする「ゲーム」とは言えません。

でも、それが果たして商品としてのゲームの魅力の本質だったのかどうなのか?
過去のゲームの文法を逸脱していて「ゲーム」とは言えなくても、商品としてサービス事業として、プレイヤーをハマらせることができればいいんじゃないの?
という思想がソーシャルゲームの根本にあって、だからソーシャルゲームには、プレイヤーをハマらせるためのテクニック「だけしか」入っていません。攻略法を考えたり、操作を上達させるような要素は、必ずしもプレイヤーをハマらせるためには必要ない、という考え方です。

では、そのプレイヤーをハマらせるテクニックとはなんなのか。
その一つが「間欠強化」です。

間欠強化というのは、相手の行動に対して数回に1回だけご褒美を与える状況を作ること。
行動に対して毎回ご褒美をもらえるよりも、数回に1回だけもらえた方が、その行動にハマりやすいんですね。
ご褒美をもらえるのが「数回に1回」という状況をどれだけ継続させるかが、ハマらせるテクニックの本質だと言えます。

これまでの「ゲーム」では、いったんプレイヤーが攻略法を発見したり上達してしまうと、ご褒美をもらえるのは「ほぼ毎回」になってしまいました。ついでに言うと、その攻略法や上達させるスキルにしたってもう何年も前から新しいものは出ていないので、いろんなゲームをある程度やっていれば、「あ、今死んだけど、ここはあのパターンと同じだろうから、こうすればいいんでしょ」という、ゲームの構造がどうなっているかをすぐ想像できてしまって、そうなるとそもそもモチベーションが発生しないので間欠強化も成立しない。

それがソーシャルゲームでは、目的とするプライズを得られるのが数回に1回という状況が延々と続き、バランスが崩れないんですね。(崩れるのは唯一、プレイヤーがリアルマネーを使って無敵装備を購入したときだけです)

Facebookにも、間欠強化が大いに働いています。
Facebookにおけるご褒美を、他の人からのコメントやいいね、友達申請といったコミュニケーションの数とすれば、それを友達全員から毎回100%確実にもらえるような方法はないわけで、自分のアクションに対するご褒美はどうしても「数回に1回」になります。そこで、周囲からアクションを起こしてもらえるような記事は何だろうなどと考えながらハマっていく、というシナリオですね。Facebookの場合は、相手がプログラムではなく人間なので、「数回に1回」のアルゴリズムはソーシャルゲームよりももっと複雑です。

余談ですがアルゴリズムが把握できないほど複雑すぎる場合、人はそれを「ランダム」と認識します。純粋なランダムは(それが可能かどうかは別として)「でたらめ」でもあります。でたらめはユーザーのモチベーションを失わせますので、そうさせないためには、あるていど傾向・偏りを感じさせる必要があり、その点で、Facebookでコメントやいいねといった報酬を発生させるアルゴリズムのコアが「他の人間の感性」であるというのは、ゲームとしては非常に興味深いですね。


ゲームやFacebookとヨット競技が似ているというのは、この間欠強化という点にあります。
では、ヨット競技のどこで間欠強化が生じるのか?
そろそろ本題に入ります。



というところで、続きはまた明日。